ローカット・フィルターの検証 


アナログ録音のようなダイナミックレンジが狭い場合にはローカット・フィルターは必要でしたが、昨今のダイナミックレンジが広いデジタル録音にはローカット・フィルターの使用はあまり意味を持ちません。
 
特にローカット・フィルターを使用せずに録った音を、本格的なスピーカーで再生した時の重低音の迫力感にはビックリします。
録音時の注意としてレベルオーバーしないように少し入力レベルを下げて録音します。
 
なお屋外での防風用のローカット・フィルターの使用は有効というか必要です。
 
実際にローカット・フィルターを使用した場合と使用しなかった場合について、聞き比べてみます。
 録音は自作の1.5Vマイク電源を2OUTにして、1つをローカットをON(65または85Hz)にして2台のDATで同時に録音しました。
 
再生するに当たってPC付属のスピーカーやラジカセのような安物のオーディオでは、違いが聞き分け られないと思います。
アップした音源のファイルはMP3なので、これもまた十分にDATとDSMマイクで録った音を再現できるかどうか疑問ですが・・・。
1) ライブハウスでのヘビィー・ロック・バンド −その1−
録音位置:ステージ前4〜5m中央
録音レベル: (マイク感度:L
ローカット・フィルター(65Hz)を使用使用せず
 
入力はオーバー気味でしたが、全然歪んでいませんでした。演奏が終わってもしばらくの間、耳鳴りがしていて翌日もその症状が残っていました。
 さて音ですが、ローカット・フィルターを使用しないで録音したものを再生してみると、スピーカーのコーンが大きく振動して重低音の音圧を感じますが、使用したものはそれが減少して少し物足りなさを感じてしまいます。やはりへビィ・ロックは重低音が響かなければ意味がありませんね。
 入力レベルについてはローカット・フィルターを使用してもしなくてもほとんど変わりませんでした。低音部以上に中・高音部の音圧が大きいために差が出なかったのではないでしょうか。
録音レベルは安全をみてぐらいがベストかと・・・
 
2) ライブハウスでのヘビィー・ロック・バンド −その2−
録音位置:ステージ前3〜4m中央
録音レベル: (マイク感度:L
ローカット・フィルター(85Hz)を使用使用せず
 
入力は最大でも−2dBでベストな録音でした。70年代の音を再現して音を出しているため、それほどバシバシと重低音は出ていませんでしたが、さすがに85Hzでのローカットでは 約2〜3dBほど入力ピークが下がっていました。
当然のごとく低音部もだいぶカットされているようで、迫力感に欠けます。
 
3) 大ホールでのプログレ・ロック・バンド
録音位置:PA卓の真後ろ(18列目中央)
録音レベル:7.5 (マイク感度:L
ローカット・フィルター(65Hz)を使用使用せず(右チャンネルのみ)
 
思った以上にバスドラムやベースの音が大きく出ていました。
再生してレベル・メータで見る限りローカット・フィルターを使用してもしなくてもほとんど同じレベルで振れていました。65Hzぐらいのローカットは入力レベルに対してはあまり影響ないのかもしれません。
ただ、再生時のスピーカのコーンの振動や重低音の響きなどは、ローカットを入れない方が断然良いですね。
なお、この録音時にローカット・フィルターを使用せずに録音したDATのマイク入力の接触不良のため、左チャンネルの音が非常に小さくなって録音されてしまったので、ご了承下さい。
こういったトラブルは結構発生するので、テープでグルグルに巻いて固定しましょう。

 

ローカット・フィルターを使用するメリットは重低音部の音を減少させて、入力がオーバーしないようにすることですが、それによって重低音による迫力感が減少してしまいます。それなりの再生装置で聞くとその差は歴然です。

黄色がローカットした時の状態(シミュレーション・ソフトより)

できることならローカット・フィルターを入れないで、少し入力レベルを下げて録音した方がライブの臨場感を再現できて良いと思います。特にロック・コンサートにおいては重低音なくしては全然おもしろくおりませんから。 結局、ローカット・フィルターを入れるか入れないかは個人の好みということになりますね。

ただし、CD-Rに焼くとローカットしたように重低音が少し減少します。これは48kHzから44.1kHzにビットレートが減るため仕方がないことです。純粋に重低音を再現するにはDATで再生するしかありません。今後普及するとみられるDVD-Audioに期待しましょう・・・

ローカット・フィルターなしの場合には、マイクを直接DATに繋ぐのではなく、間に1.5V以上の安定したマイク電源を通した方が過大入力に対して良いと思います。